移動祝祭商店街 まぼろし編 / Roaming Shopping Street Festival: Phantom Edition

都市を拡張する舞台美術家たちが立ち上げる「まぼろしの景」

劇場からまちに出て舞台美術のあり方を更新するコレクティブ「セノ派」がウェブサイトを拠点に、オンラインとオフラインを往復しながら“まぼろし”の「移動祝祭商店街」を立ち上げる。4人の舞台美術家たちは、豊島区の商店街を舞台に「一人でいる方法」をテーマとしてまちめぐりや映像鑑賞などさまざまな形式からなる4つのプログラムを公開。あなたはときに現実の商店街を歩きながら、ときにオンラインの映像を鑑賞しながら、あなただけが見られる都市の姿を“幻視”するはずだ。

会場:本特設ウェブサイト / 豊島区内商店街 / 豊島区内各所2020.10.16 Fri - 11.15 Sun

会期終了に伴い、一部のコンテンツの公開は終了しています

一覧


プログラム

  • その旅の旅の旅

    サイト上で公開されるのは、6名のアーティスト=旅人が豊島区の商店街を巡って見つけたさまざまな〈景〉。あなたはその〈景〉をたよりに実際に商店街を訪れ、誰かの旅を追体験しながら自分の旅をサイトへと投稿する。それはあなただけの「旅の旅の旅」となるはずだ。

  • Roofing the Roof with a Roof

    南長崎の建物の「屋上」を舞台とする作品を映像で公開。屋上に浮かび上がる風景にフォーカスした本作は、舞台のみならず客席や観客のリ・デザインを試みる。たしかに存在するのに忘れられてしまった屋上空間を通して、あなたはどんな風景を観るだろうか?

  • みんなの総意としての祝祭とは

    南大塚の商店街にQRコードつき「顔ハメパネル」が出現。そこで写真を撮ることで、あなたは映像へとアクセスする。まちの人々が語った「自分にとっての祝祭」をもとにつくられた映像を通じ、あなたの頭のなかには「みんなの総意としての祝祭」が立ち上がるかもしれない。

  • 眺望的ナル気配

    池袋本町の人々が語る「祝祭」と「まちの原風景」と、その記憶をもとにした架空の商店街の模型。模型の《まち》をめぐるスライドショーや映像を観ながら、あなたは存在しない商店街を複数の視点から眺め、かつてあった/あったかもしれない祝祭の景色に触れていく。

移動祝祭商店街とは

都市空間とパフォーミングアーツは「商店街」で交差する

 英語で「舞台美術」を意味する「セノグラフィー(scenography)」をその名に冠するとおり、セノ派は「舞台」でも「美術」でもなく「シーン(scene)」をつくろうとしている。彼/彼女らによれば、それは「景」とも呼べるものだ。風景、景色、情景、絶景……劇場を飛び出してまちのなかにさまざまなシーン/景を立ち上げることで、セノ派は都市空間を拡張してしまう。

 そんな彼/彼女らがF/T 19のオープニングプログラムとして披露したパフォーマンスが「移動祝祭商店街」だ。豊島区の複数の商店街を舞台にしたこのパフォーマンスは、3人の舞台美術家が商店街の文化や風景を汲み上げてつくった山車を中心に行われるもの。3つの山車はそれぞれ異なる商店街から出発し大塚駅前の広場に集結、最後は広場で大規模なダンスパフォーマンスへと結実していった。

 舞台美術の可能性を追求するセノ派が「商店街」をテーマに選んだのは、決して故なきことではない。ヨーロッパのパフォーミングアーツが昔から「広場」を中心に発展していったとすれば、広場なき日本では「道」を中心に道行きの芸能やお祭りといった芸能がつくられてきたからだ。商店街(shopping street)とは道(street)であり、まちでもある。都市とパフォーミングアーツをつなぐ空間として、それはある。「移動祝祭商店街」とは、日本の都市空間のなかでいかにパフォーミングアーツが可能か模索するための試みでもあるのだ。

 コロナ禍によって集まることが難しくなった今年の「移動祝祭商店街」は、「まぼろし編」として実施される。そもそもパフォーミングアーツとは、つかの間の“まぼろし”を立ち上げるものでもあるだろう。パフォーミングアーツと都市空間の交点を求めて、オンライン/オフラインを往還しながら今年もセノ派はつかの間の〈景〉を立ち上げていく。

写真:合同会社アロポジデ | Photo: Alloposidae LLC

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活動アーカイブ

  • 「移動祝祭商店街 まぼろし編」っていったい何?

    4人の舞台美術家が集まった「セノ派」による「移動祝祭商店街 まぼろし編」とは、いったいどんなプログラムなのでしょうか?4つの企画をたどりながら、どのような鑑賞・体験が生まれていくのかご紹介します。

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  • NEW

    2021.1.30

    セノ派座談会: 「移動祝祭商店街」という名の新たなプラットフォーム

    オンラインの活用という初の試みを経て無事に会期が終了した「移動祝祭商店街 まぼろし編」。昨年とは異なるアプローチを強いられたセノ派の4人がつくりだした作品は、パフォーマンスや展示というより「プラットフォーム」と呼ぶべきものなのかもしれません。

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  • 2020.12.3

    「その旅の旅の旅」レビュー: 旅の道筋を振り返ってみること

    「その旅の旅の旅」に寄せられた、一般の方々が発見した新たな〈景〉の数々。6人の旅人=アーティストらはその〈景〉から何を感じたのでしょうか。それぞれから今回の「旅」を振り返るコメントを寄せてもらいました。

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  • 2020.11.19

    「その旅の旅の旅」制作座談会: 景を見出す方法、景が立ち上がる瞬間

    杉山チームの企画に参加したアーティスト6名が集まり、制作を振り返る座談会を敢行。音楽や俳句、スケッチなどを活用した多彩な景の数々は、どのように生まれたのでしょうか。6人の会話からは、身近なまちから景を発見するためのさまざまな方法が浮かび上がりました。

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  • 2020.11.18

    「みんなの総意としての祝祭とは」制作レポート#3: バーバーから立ち上がるものをめぐって

    南大塚に位置する老舗の床屋「バーバーマエ」は、佐々木チームにとって重要な場所であるらしい。佐々木チームの映像制作を担当する玉田さんがパンチパーマをあてる姿を眺めながら、このバーバーの魅力について考える。

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  • 2020.11.15

    「眺望的ナル気配」レポート#3:「プロセス」から生まれるもの

    「眺望的ナル気配」をつくるなかで、中村さんは「プロセス」が重要なのだと語ります。アンケートやスライドショーという形式など、さまざまなプロセスの存在を意識させるかたちでつくられたこの企画がどう生まれたのか、チームのメンバーからコメントを寄せてもらいました。

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  • 2020.11.15

    「眺望的ナル気配」レポート#2:6つのキーワードがつなぐ「まち」と「人」

    中村チームが制作したスライドショーは、まちの人々へのアンケートを通じてつくられた6つのキーワードに沿ってつくられたもの。いくつもの視点からまちを眺めさせてくれるこれらのキーワードは、どのように選ばれたのでしょうか。

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  • 2020.11.14

    作品と観客をつなぐ“契約”のために舞台美術ができること ――セノ派・佐々木文美インタビュー

    (文・もてスリム/写真・泉山朗土) 舞台美術家コレクティブ「セノ派」による企画「移動祝祭商店街 まぼろし編」が、特設ウェ...

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  • 2020.11.12

    「プロセス」を見せることで、豊かな情景が広がってゆく ――セノ派・中村友美インタビュー

    (文・もてスリム/写真・泉山朗土) 舞台美術家コレクティブ「セノ派」による企画「移動祝祭商店街 まぼろし編」が、特設ウェ...

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  • 2020.11.12

    「Roofing the Roof with a Roof」制作レポート#2:哲学の言葉は作品をどう変えるのか

    坂本チームの企画を影で支えていたのは「哲学者」だった。作品やコンセプトの言語化に貢献したという哲学者・清水友輔さんを招き、坂本さんと対談を敢行。果たして哲学の言葉は今回の企画にどのような影響を与えたのでしょうか。

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  • 2020.11.10

    「みんなの総意としての祝祭とは」レポート#2:「顔ハメ」から、まちが見えてくる

    顔ハメパネルとQRコードという一風変わった仕掛けによって、大塚のまちのなかで祝祭の風景を予感させる「みんなの総意としての祝祭とは」。謎だらけの企画の全容を探るべく行なわれた、体験まち歩きツアーの様子をご紹介します。

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  • 2020.11.9

    「その旅の旅の旅」レポート#2:まちの「カーブ」から立ち上がる景を探して

    「その旅の旅の旅」で杉山至さんは豊島区内の「カーブ」を追ったスケッチを公開中。そのカーブとは、じつは谷端川なる川の“影”でもあるようです。去る8月に行われたスケッチ取材の様子をお届けします。

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  • 2020.11.9

    「Roofing the Roof with a Roof」レポート#1:屋上に浮かぶ部屋で上演された生活

    落合南長崎のとある屋上に浮かぶ「部屋」を舞台にした本企画は、屋上に舞台や客席をつくることから始まりました。台風近づく悪天候のなか行なわれた撮影の様子を追いながら、この企画が立ち上げようとしている新たな〈景〉に迫ります。

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  • 2020.11.8

    「みんなの総意としての祝祭とは」レポート#1:祝祭へつながる「顔ハメ」と「QR」

    顔ハメパネルとQRコードを活用した「みんなの総意としての祝祭とは」が、南大塚にて公開中。まちなかに置かれた多彩な顔ハメパネルが生まれるまでには、かなりの試行錯誤がありました。佐々木チームの苦闘の一端をお届けします。

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  • 2020.11.6

    「眺望的ナル気配」レポート#1:「模型」のスライドショーから見えてくる祝祭

    「眺望的ナル気配」は、模型をもとに6つのスライドショーと1つの動画で架空の都市を表現します。「模型」や「スライドショー」とはいったいどのようにつくられるのでしょうか? 10月に行なわれた撮影の現場を訪れました。

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  • 2020.11.5

    「その旅の旅の旅」レポート#1:「その旅の旅の旅」を旅する

    アーティストたちが旅を通じて見つけた〈景〉をたどることで鑑賞者が新たな旅を紡ぐ企画「その旅の旅の旅」。〈景〉をたどるとはいったいどんな体験なのでしょうか? 試みに3人のアーティストらの旅の痕跡をたどってみました。

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  • 2020.11.4

    舞台美術家は、小さな「変異」を起こして街を変えていく ――セノ派・坂本遼インタビュー

    (文・もてスリム/写真・泉山朗土) 昨年F/Tのオープニングプログラムを担当した舞台美術家コレクティブ「セノ派」が、今年...

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  • 2020.10.15

    人が集まれない時代に、舞台美術家はいかなる「景」を生み出すのか――セノ派・杉山至インタビュー

    (文・もてスリム 撮影・鈴木渉) 「セノグラフィー」との出会い ──杉山さんはかねてより「舞台美術」だけでなく「セノグラ..

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アーティストプロフィール

Photo: Ryosuke Kikuchi

セノ派(舞台美術家コレクティブ)

F/T19オープニング企画『移動祝祭商店街』をきっかけに、舞台美術家の杉山至、坂本遼、佐々木文美、中村友美により結成されたコレクティブ。戯曲や俳優を前提にするのではない、舞台美術を起点とした場面、情景の創造に取り組む。

名称の「セノ」は、舞台美術、場面などを表す「セノグラフィー」に由来する。