「Roofing the Roof with a Roof」レポート#1:屋上に浮かぶ部屋で上演された生活

日時:2020.11.9


屋上に浮かぶ部屋で上演された生活

屋上に生まれた生活空間

去る10月8日、台風が近づくなかで、チーム坂本企画「Roofing the Roof with a Roof」の映像撮影が行なわれました。落合南長崎エリアの建物屋上に浮かぶとある部屋を舞台にした本企画は、この部屋で“上演”される生活のシーンとその様子を観る「観客」の様子も含めた映像をウェブサイト上で鑑賞するもの。この日は本番初日となり、実際に屋上で部屋が整えられていき、撮影が行なわれました。

何もない屋上に部屋をつくるだけでも大仕事ですが、この日は台風が近づいていることもあり天気も大荒れ。雨風吹くなかで設営が進んでいきます。屋上を舞台とすることもあり、雨から逃れる場所もなし。安全を確保しながら、キッチンやダイニング、リビング…と部屋がつくられてゆきます。曇り空の下に現れた部屋は、気持ちよい空間でありながら、どこか異様なムードを漂わせています。

部屋の設営が終わると、今度は映像撮影のためのアングル検証へ。モニターと実際の屋上を見比べながら、撮影アングルを検討していきます。坂本さんが「想定外のことは起きませんでしたが、思っていたより楽だったことはひとつもなかったです(笑)」と語るとおり、悪天候かつ野外の撮影は大変だった様子。

部屋の解体と再建

じつはこの日の撮影のあと、坂本チームは台風に備えて一旦すべてのセットを解体することになってしまいました。撮影は複数日にわたって行われるため、撮影の再開に向けて台風が去ってからまたセットを建てなおすことに…。天候の変化やセットの再建によってスケジュールが二転三転しながらも、約一週間かけて撮影は無事に終わりました。

屋上の様子を見ているとつい「部屋」の部分にだけ注目してしまいますが、「客席」としてつくられたエリアも見逃せません。ここには客席として置かれているのは、ベッド。今回つくられた映像には部屋で上演された生活のシーンだけではなく、ベッドからその上演を観ている観客の様子も捉えられています。劇場ならざる場所に舞台と客席と観客を持ち込んだこの企画は、舞台と客席の、舞台と観客の、作品と観客の新たな関係性を提示しているのかもしれません。

設営と解体を繰り返して生まれた映像は、現在「Roofing the Roof with a Roof」のページで公開中(2020.11.30で配信終了)。屋上に浮かぶ部屋にいったいどんな風景が立ち上がるのか、ぜひご覧ください。

テキスト:もてスリム / 写真:泉山朗土