カーブのその先は。 8 清戸道

旅人:杉山至

東京の原風景の一つがここに

  • 清都道・冬の旅 妄想スケッチ 清都道・岩崎家の屋敷林

    ※画像をクリック/タップして横に送ると、1-2『粟島神社・弁天池妄想スケッチ』が見られます
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旅人より

道が曲がるには訳がある。
地形がそこで変化しているか、
神聖なものや不可侵な何かがあり真っ直ぐ進めない理由がある。

また古い道は必ずといって良いほど緩やかにカーブしている。
けもの道のように身体を自然に運べる歩きやすい流れがそこにはある。

豊島区は谷端川の川端に沿って発展してきた。椎名町の長崎神社、大塚の天祖神社、池袋本町の氷川神社等を軸に街が広がる。点在する古い神社の山の端をなぞるように谷端川はカーブを描く。わずかな地形の変化と方位を読み解き古人はそこを神聖な場所としたのだろう。

豊島区を旅する中で今は暗渠の谷端川を可視化したいと思いカーブに注目した。
豊島を育んできた谷端川のまぼろしの景が少しでも立ち上がればと思います。

8-1『清戸道 岩崎家の屋敷林』
武蔵野の気配が色濃く残る。 大学生の時三鷹の築80年以上の農家をシェアハウスしていた事がある。 あの当時まだ武蔵野の気配が三鷹には色濃く残っていた。30年も前の事だ。 こんもりとした樹々をトキワ荘公園前の道からみたとき、不思議と引き込まれてしまった。 これより西は武蔵野。妙正寺川の段丘の尾根である清戸道の緩いカーブを東に進めば、 神田川と合流する落合への崖を下り江戸の入り口となる。

8-2『清戸道 冬の旅妄想スケッチ』
今朝は寒い。まだ暗い時分に江戸を立ったがどんよりとした空から白いものが降ってきた。落合の谷を抜け尾根に出た。ああやっと見えてきた。あの鬱蒼とした森を抱えた大店を過ぎればいよいよ道は真っ直ぐ深い。お茶でも飲みたいが降り積もる前に家路を急ぐ。

 

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旅人プロフィール

Photo:Ryosuke Kikuchi

杉山至 すぎやま・いたる

舞台美術家。国際基督教大学在学中より劇団青年団に参加。2001年度文化庁芸術家在外研修員としてイタリアに滞在。演劇、ダンス、ミュージカル、オペラまで、ジャンルを問わず幅広く活躍。舞台美術ワークショップや劇場のリノベーションも手がけている。カイロ国際演劇祭ベストセノグラフィーアワード2006、読売演劇大賞最優秀スタッフ賞(14)受賞。